Responsive Menu
Add more content here...

【在留資格考察】劇場版『チェンソーマン レゼ篇』を観て

※本投稿には物語のネタバレを含みます。予めご注意ください。

週末の夜、ふと思い立って映画館に足を運びました。
ポップコーンの香りと、スクリーン前のざわめき。
席に沈み込むと、あの独特の静けさが広がっていきました。
──劇場版『チェンソーマン レゼ篇』

映画館の暗闇の中で、静かに息を呑みました。
雨の音、レゼの笑顔、デンジの不器用な言葉。
その一つひとつが温かくて、少し切なくて──。
まさかあの小悪魔な少女が、ロシアの工作員だったなんて。

信じたくない気持ちと、どこか納得してしまう自分がいることに驚きました。
果たして彼女の微笑みの奥にあったのは、恋心なのか、任務なのか。
物語の最期にして死の直前、デンジへの想いがほんの一瞬こぼれ落ちたとき、
「私も学校行ったことなかったの」彼女はそう、呟きました。
その一言が、すべての虚構を溶かしてしまうようで、今も鑑賞後の余韻となっています。

—そんな彼女が日本にいた理由を、ふと考えてしまう。
レゼという少女は、どんな在留資格で、ここにいたのだろう。

1.工作員活動は在留資格に該当しない

入管法の在留資格の中に、工作員活動に該当するものはありません。
「外交」や「公用」は外国政府の職員を対象としますが、いずれも日本政府の同意が前提です。
もし彼女が秘密裏に活動していたなら、それは法的には不法入国在留資格詐称にあたります。

2.「留学」ビザは理論上もっとも自然──しかし突破は困難

それでも、彼女のように自然に街に溶け込み、穏やかに暮らす姿を想像すると、
一番しっくりくるのは「留学」です。
語学学校に通いながら、小さなカフェでアルバイトをして、静かに日々を重ねる──。
そんな日常の中でデンジと出会い、恋のようなものに落ちたとしても不思議ではありません。

  • 表向きの目的:日本語の勉強や文化の理解
  • 滞在の自然さ:若い女性留学生として違和感がない
  • 生活の形:週28時間までのアルバイトも合法

しかし、彼女自身が語ったように「学校に行ったことがない」のであれば、
留学ビザに必要な学歴要件を満たすことは難しい。
日本入管の審査を正面から突破するのは、ほぼ不可能だったでしょう。

3.「技術・人文知識・国際業務」も現実的には困難

もし彼女がもう少し年上で、社会人として潜入していたなら、
「技術・人文知識・国際業務」も形式上は選択肢に見えます。
貿易事務、マーケティング職など、外国人専門職が多い分野です。
しかしこの在留資格も、大卒や10年以上の実務経験が求められる厳格な学歴・職歴要件があります。

レゼのように「学校に行ったことがない」と語る推定二十歳前後の人物が、
大学卒業証明や専門職の職歴証明を提出することは不可能。
たとえ訓練や諜報活動の経歴を“実務経験”として偽装しても、
日本の入管が受け入れることはありえません。

4.ロシア国籍者は短期滞在ビザ免除対象外

そもそも、ロシア国籍者は日本の「短期滞在査証免除国」には含まれていません。
観光や親族訪問であっても、来日前に日本大使館・総領事館でビザを取得する必要があります。
原則は90日以内の滞在、そして現在は日露関係の緊張により審査も非常に厳格です。
つまり、彼女のような人物が“ふらりと来日して働いていた”という状況自体、現実には成立しません。

5.該当資格のないまま、静かに潜伏していた少女

こうして見ていくと、レゼに適用できる在留資格は一つも存在しません。
学歴も専門職歴も証明できず、査証免除国でもない──彼女はどこにも分類されない存在でした。
だからこそも物語の象徴でもある、個人経営の喫茶店が彼女の拠点になったのではないでしょうか。

カフェ店員を振る舞いながら、その実態は潜伏。
穏やかなマスターのもとコンプライアンスに脆弱性のある環境を選び、誰の記録にも残らない場所で息を潜めていた。
その静寂の中に、デンジとの儚くも短い安寧があったのかもしれません

“在留資格の外側”でしか生きられなかった少女。
それでも彼女は、あくまで悪魔でなく人としての居場所を求めていたのです。

※本記事はフィクション作品を題材にした考察です。貴方ももし在留資格にお悩みであれば、気兼ねなくこちらからお問合せください。


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: